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西向幸三さんinterview ③

トライ&エラー
​失敗しないとわからない

糸数さんになったのはいつからなんですか?

西向: 5人を起用したときに、彼らに言ったんですが、「もう勝負だから、これは。これ本当に3ヶ月で終わるかもしれないので、その中で君たちも競争だからがんばってね。もしかしたら最後は一人か二人。二人とか三人になっているかもしれないよ」という話も全部含めた上で、一緒に仕事を始めたので。で、始めてみると彼女のバイタリティというか、あの笑い声ですよね。あれに本当に助けられたという人たちもたくさんいるので。なんだ、このガハハ笑いするおばさんは?!みたいな。でも見てみるとかわいらしい子がやっている!そのギャップにみんなやられて、一曜日が二曜日になり、二曜日が三曜日になって、最後は帯ですね。帯になったのはいつかな?もうはっきり覚えてないです。たぶん、二年、三年目くらいですかね。そんな感じだと思います。それはもう明らかにリスナーが求めているので、そうしようと。

 

今聴くと絶妙なコンビという、この二人じゃないとこの番組はありえない、という感じなんですけど、もともと出会いはどんな感じでした?

西向: オーディションです。基本的に新しい番組作るときには大体オーディションやるんですけど。すでにしゃべっている方々と一緒に仕事をするというのももちろんアリなんですけど、どうせだったら、新しい可能性を。私自身がオーディションでこの仕事に入っているので、何がどうなるかわからないじゃないですか?!それはオーディションで、経験不問でやりたい人どうぞって。実は、彼女、東京の大学にいて東京から応募してきたんですよ。

 

へ~っ!

西向: ま、沖縄出身ですけど。「わざわざ来るの、面接受けに?!」、「あ、ぜひ」というようなやり取りをして、それで会ったのがはじめてですね。

 

最初と今とだいぶ違いますか?

西向: だいぶ違いますね!彼女もそれは感じてると思うんですが、やっぱり彼女もアナウンス学院行っているので、やっぱり放送ってこういう風に喋らないといけないんだっていう。はじめのころは、オーディションのときもそうでしたけど、基本的にそんなになまることもなく、普通にそつなく喋る感じの子だったんです。ただ沖縄に帰ってきたら、なまりが戻ったというのもあるでしょうし。自然とどんどんなまりが出るように。わからない、もしかしたら、彼女、意図してやったのかもしれないんですけど、もうびっくりするくらいなまってて。彼女、沖縄市のいけんとうという出身なんですけど。いけんとうという住所はないんですけど、あの辺が大体いけんとうというところで。その言葉が随所に出てきてて、それがやっぱりうちなんちゅーの心を刺激したというか。“なに?!っ”ていう。こ、こんなにうちなーぐち、ばんばん喋っておばさんみたい。本当に沖縄の中部のおばさんなんですよ(笑)、あの喋り方って。それは中部の人はわかる。私も中部なんで。宜野湾ですけど。はじめは直そうとしたんですけど、ま、いっか!と思って。その方が彼女も生き生きと喋ってるし。きちんと読み物をさせたら、それはできるんで、それとのメリハリがつけば、いいかなぁと思って。そのころ、女性3人、男性2人という状況で、いわゆる全体の中のバリエーションのひとつとしてアリだったので、もうそのままでしたね。

 

番組を聴くと、もちろん下ネタもありますし、でもカルチャー…映画とか音楽の話もすごく視野が広いなぁという。歴史の部分もしっかり掘っていて、わぁすごいなーって聴いて思ったんですけど、西向さんは、今まですごく本が好きで読んでたっていう。あれは西向さんの方向性というか、こういうのやろうよという感じでやってるんですか?

西向: そうですね、基本的に制作における企画はほぼ私がやっているので、コーナー作ったりとか。で、さっきの話ですけど、その自主規制でラジオが面白くなくなってしまったひとつに、やっぱり政治を語らなくなってしまったのかな、という部分がひとつあって。もちろんメディアが政治を語る上で、中立公正な立場に立ってやらなきゃいけないというのは重々承知しているんですが、あまりにもそこにこだわってしまって、非常に中途半端というか、言いたいことが言えなくなってしまって、とにかくそこでみんなが言いたいことが言えなくなっているのがすごくイヤだったんですよ。で、40過ぎたおじさんですから、政治とかに対して考えることもたくさんあるので、それはやっぱり自然に出ちゃうんですよね。別にこれがやりたかったからというわけじゃなくて、基地の問題であったりとか。そういったものは、“自然の発露”として出てきたという感じですね。それをただやってるという、自然体でやっているっていえばやってるし。もちろんお叱りもいっぱい受けましたけどね。偏っているとか、もっと中立公正であるべきでしょ、っていう声もたくさん頂きましたし。その声は頂きつつも、「これ言ったら叱られるな」というのを言わないのはイヤなんですよ。叱られるな、と覚悟を決めて言ったら、それに対する意見を求められたときに、きちんと自分が説明できるのかということと、その中で自分に非があるときは、素直に認めてあやまって、それを次どういう風に生かすのかが大事であって。

 

さっきのトライ&エラーじゃないですけど、失敗しないとわからないですからね。とりあえず、当たり障りのないことを言って、誰からなにも言われないよりは、多少どぎついことを言っても、聴いてる人が「いや、そうじゃないだろう、西向!」って文句言ってくれて、それに対してお互いによい方向を考えていければいいと思っているので。そりゃ、へこみますよ。やめよう、もういいかな、とりあえずお笑いだけ、楽しいバカ話だけでもいいかな~と思うこともあるんですけど、ま、そこはちょっと残しておかないとまずいな~というか。まずいっていうか、そこはこの仕事をやっていく上で、自分の考え方というか、立ち位置はそうなっちゃっているんですね。

 

なんか番組を聴いていると、言っちゃいけないことは基本的にないのかなーという感じが(笑)

西向: (笑いながら…)そうですね。

 

その言い方もすごくよく考えられているな、というお笑いというお砂糖をまぶしているときもあるし、そのバランスがすごく絶妙ですね。

西向: 私がこの仕事はじめたときに言われたことなんですけども、放送の中でやっていいことって、例えばこの大きさだとしたら、ぎりぎりどこまで行けるかだと思うんですよね。枠ぎりぎりまで攻められるか。時々、自分で、中からがんがんがんと押していって、その枠をできたら広げていけたら一番いいんですよね。その作業を少しずつ少しずつ地道にやっていくという。だから他の人が言ったらもっと叱られるところを、“西向だからしょうがねーか”という風になれば…(笑)。それを目指しているというか、普段の私の言動、言葉を聴いてくれた人が、でもあの人はこういう考えがあるから、こういうことを言っているのよね、となんとなくわかってくれてるみたいな…。幻想かもしれませんけどね。もしかしたら本当に私に嫌気がさして、聴かなくなってしまったからクレームが来ないのかも、というのももちろん一方で現実としてありますよね。実際にそれで離れていったリスナーもいると思うし。それはそれでしょうがないというか、申し訳ないですね、すみません、ごめんなさい。あなたが聴きにくい番組で。というスタンスを持ちつつも、それをやっていくしかないかなーという感じですね。で、大事なのは、「社会的弱者を傷つけない」というこの一点だけは絶対に守らなきゃいけないな、という部分ですね。いろんな意味でのマイノリティであったりとか、そういう方々にきちんと配慮して、傷つけない。それさえ守っていればいいんじゃないかとは個人的には思いますけどね。

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